地産地消にこだわり、京都の食材をふんだんに取り入れた料理を提供する[ホテルグランヴィア京都]のレストラン。和食『浮橋』では、京都山城産のお米「ヒノヒカリ」を使用しています。
京都山城産ヒノヒカリは、日本穀物検定協会が実施している「米の食味ランキング」において、5段階評価中最高位の「特A」評価を2021年と2022年の2年連続取得した良食味米。浮橋では、その中でもJA京都やましろの部会で定められた厳しい規定を守り、より手間暇を掛けて育てられた特別栽培米の「ヒノヒカリ」を、JA京都やましろを通じて仕入れています。
京都山城産ヒノヒカリが育てられる環境や過程を知るため、『浮橋』の料理長 三瀨が山城地域を訪ね、特別栽培米の生産者と対談。初夏を迎え田植えを終えたばかりの田んぼのあぜで、美味しいお米を育てる秘訣や栽培へのこだわりをお聞きしました。
穏やかな気候と清らかな水が育てる
冷めても美味しい万能米
「ヒノヒカリ」は、日本で最も有名なお米と言える「コシヒカリ」と「黄金晴」の交配によって生まれた品種です。小粒ながら水分量が多くモチモチとした食感で、香り・ツヤ共に優れています。『浮橋』では、京都府産の美味しいお米を探しているなかで実際に試食をしてその味に惚れ込んだのをきっかけに、2023年7月にこの京都山城産ヒノヒカリを仕入れることとなりました。料理長 三瀨は、京都山城産ヒノヒカリを使用することで、店内で食事をされるお客様はもちろん、お持ち帰り商品を利用されるお客様にも自信を持って料理が提供できていると言います。
「すべてのお客様に炊き上がって蓋を初めて開けた状態のごはんを提供したいというのが私たちの望みです。そんな中で巡り合ったのが、京都山城産ヒノヒカリでした。炊きたてが美味しいのはもちろんなのですが、ヒノヒカリは冷めても甘さや旨み、粘りがあり、余韻が長いお米だと感じました。『浮橋』ではお持ち帰り商品としてうなぎ弁当や鯖すしなども提供しているので、重宝しています。」
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京都山城産ヒノヒカリは、毎年5月下旬ごろに田植えがはじまります。 |
山城地域は、穏やかな気候に恵まれた丘陵地。東は信楽山地、西は西山や京阪奈丘陵などに挟まれ、宇治川・桂川・木津川の合流点を要に山城盆地が扇状に広がっています。豊富な水源があり、川沿いにも関わらず粘土質の土壌は、肥料のもちが良く水を蓄えられることから、「ヒノヒカリ」を育てる環境に最適です。
この日訪ねた田んぼでは、木津川を水源とする地下水をポンプで汲み上げて田んぼに送り込んでいました。気温が35度を超えると稲がバテて品質が低下してしまいますが、暑い夏でも一定の水温を保つ地下水を利用することで、効率よく温度を下げることができます。京都山城産ヒノヒカリが「特A」を取得できたのは、こうした恵まれた環境で育てられていることも大きな要因の一つです。
生産者の米づくりへの誇りと
自然への敬意から生まれる特別栽培米
山城地域では153人の米農家が結集し、水田の生態系を保持していくために、農薬や化学肥料を少なくした栽培方法で特別栽培米の「ヒノヒカリ」を生産しています。今回、料理長 三瀨がお話をお聞きした生産者の久保隆司さんは、両親が営んできた農業を継承。25年以上「ヒノヒカリ」の栽培に携わってきた方です。
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生産者の久保さんはお米の他に、京野菜の聖護院だいこんやいんげん豆も生産しています。 |
「山城地域の特別栽培米は化学肥料や化学農薬を慣行基準の2分の1以下にして栽培されたお米です。苗づくりから農薬に頼らない方法で病気に強い稲を育てています。一般的な苗の栽培方法は、もみだねを農薬に一晩浸けることで、稲の病気にかかりにくい苗をつくりますが、特別栽培米のヒノヒカリの苗は、もみだねを60度のお湯に10分漬ける温湯消毒を採用。薬剤処理と同様にいもち病をはじめとする病害を予防する効果が期待できますし、廃液処理による環境負荷を低減できることもメリットです。」
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青々と育った「ヒノヒカリ」の苗が水田に輝く光景は、山城地域の初夏の風物詩です。 |
土づくりでは、稲刈り時に細かく刻んだ藁を資材として全量活用。毎年稲刈り後から取りかかる米づくりの工程は、土を掘り返して藁も一緒に耕すことからはじまります。
こうした持続可能な農業に取り組み、地域の美しい環境を守りながら米づくりと向き合ってきた久保さんですが、年々美味しいお米をつくるのが難しくなってきていると感じています。
「25年以上農業をやってきたけれど、最近は気温が高くなりすぎて、今までに経験がないことが起きています。穂が出る前に、葉の色の濃さを見て追肥をするか判断していますが、去年は明らかに十分肥料が足りている実りでした。ところが、収穫をして米の検査に出したら栄養不足だったんです。」
経験値でも補えない予測不可能な出来事の連続に、毎年「米づくり1年生」のような感覚だと久保さんは語ります。それでも、人と自然にやさしい米づくりを続けていくことに誇りを持ち、自然への敬意を忘れていません。
「(自身のやり方は)非常に手間暇は掛かりますが、労働力を軽減しようとする農家が主体の農業は、自然や健康への負荷が大きくなり、結局は自分たちに返ってくる。自然に感謝し、稲と対話をしながらじゃないと本当の意味での美味しいお米はつくれないんです。」
スタッフ全員が生産者の思いを
お客様に伝える架け橋に
この日の山城地域訪問のもう一つの目的が、「ヒノヒカリ」の田植え体験です。訪ねた田んぼの近くにある[JA京都やましろ]が、子どもたちに農業体験などを通じて、いのちや食べ物の大切さを伝える[ちゃぐりんスクール]を開催する日でした。
『浮橋』で京都山城産ヒノヒカリを使用しているご縁から、田植え体験と「お米を使ったスイーツ学習」に、[ホテルグランヴィア京都]を代表して料理長 三瀨が参加。まずは子どもたちと一緒に田植え作業に汗を流しました。ぬかるみに足を取られながら腰を曲げての作業は、見ている以上に重労働。植えるコツをつかんでも、まっすぐ綺麗に植えるのは意外と難しいものです。
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田植えをするのは小学生以来という料理長 三瀨。「子どもたちが一生懸命苗を植えている姿に感心しました!」 |
人の手で植える大変さを実感した後は、子どもたちと保護者の方々にお米を使ったスイーツを食べていただきました。スイーツをふるまう前には、料理長 三瀨が食育の観点から講義を実施。『浮橋』で京都山城産ヒノヒカリを使う理由や、お米ができるまでに八十八の手間暇がかかることから「米」という漢字になった成り立ちなどを子どもたちに伝えました。
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[ちゃぐりんスクール]の田植え体験で外部講師を招くのは初の試み。毎年参加している子どもたちにとっても学びの幅が広がりました。 |
用意したスイーツは、カフェレストラン『ル・タン』でも提供している、お米を使ったスムージーとかき氷。どちらもごはんに牛乳と砂糖を加えて加熱する、フランスではポピュラーなデザート「リオレ」をベースにしたものです。かき氷は「リオレ」をエスプーマ機でふわふわのムースにし、黒蜜ときなこをかけて白玉を添えました。暑い中での田植え作業だったため、子どもたちは冷たいデザートに大喜び! おかわりの列ができるほど大盛況でした。
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「お米を使ったスイーツ学習」では、スムージーとかき氷のレシピも配布。どちらもご自宅で簡単につくれます。 |
家庭で残ってしまったごはんの活用方法として、自宅で簡単につくれて意外性もあるスイーツという提案は、保護者の方々にも喜んでいただき、イベントは無事に終了しました。
「生産者の久保さんのお話を聞かせていただき、田植え体験もできて、特別栽培米のヒノヒカリがつくられている環境や、生産者の思いを自分の中に刻むことができました。お店に帰ったらサービススタッフへ今日のことを共有し、お客様へもヒノヒカリに込められた思いを伝えていきたいと思っています」と、料理長 三瀨は話します。
10月には、今回植えた田んぼで稲刈りをさせていただく予定です。今年も猛暑が予想されていますが、「ヒノヒカリ」がどのように成長をしているか、ぜひご期待ください。