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ホテルグランヴィア京都の「食」を支える 生産者と信頼関係を深めた特別な1日
(2023/12/29)
2023/10/21(土)、ホテルグランヴィア京都初となる『1日だけの出張レストラン』in道の駅 丹後王国「食のみやこ」を開催しました。
日頃からお世話になっている京丹後の生産者や、今回のイベントを通して新たに出会えた生産者を招き、総料理長・柏木健一をはじめ、ホテルグランヴィア京都のシェフが現地へ赴き、京丹後の食材をふんだんに取り入れたフルコースでおもてなし。
出張レストランの前には総料理長 柏木が生産者のもとを訪ね、交流を経て生まれたメニューがテーブルを彩りました。
ホテルグランヴィア京都の「食」を支える生産者とのつながりを深めた、特別な1日の様子をたっぷりとお届けします。
 

ホテルグランヴィア京都では、総料理長 柏木を筆頭に、京都はもちろん、これまで九州、北陸、四国などへ食材を探すため、現地へ足を運んできました。
生産者と直接会い、食材への熱い思いやこだわりを聞くことが、新しい料理を生み出す原動力につながっていると実感しています。
京丹後の食材は日頃から使わせていただいており、さまざまな生産者と交流を深めてきました。
しかし、愛情を込めて育てられた食材がどのように提供されているかを生産者にお見せする機会が無かったため、今回のイベントを企画。
ホテルグランヴィア京都の「食」に対する姿勢や思いを知っていただき、さらに交流を深めることや、新たな生産者と出会う場にもなりました。
 

最初に総料理長 柏木が訪ねたのは、ミネラルを豊富に含んだやわらかい砂丘地で、オリジナル品種のまいこ金時とまいこ里芋を栽培する『山野農園』。
土壌の影響を受け、きめ細やかな肌の芋が育ちます。
「まいこ金時は、ホクホクだけれどきめが細やかで、食べた後に甘みがくるのが特徴です。
まいこ里芋は泥臭さがなく、しっとりとした口当たりで、皮が薄くてむきやすく、煮崩れしないため料理に使いやすいと喜ばれます。
砂丘なので通常の土で育てるよりも水はけが良く、水やりは大変なのですが、甘み・旨みが凝縮するんです」と山野さん。
 

60年ほど前からさつまいも・里芋農家を始めた『山野農園』。現在は3代目の山野琢也さんが継承し、オリジナル品種のまいこ金時とまいこ里芋を誕生させました。

まいこ金時とまいこ里芋は今回の出張レストランで初めて使う食材の一つでしたが、総料理長 柏木は実物を見て思い描いていたメニューにぴったりだったと言います。
「まいこ里芋は水分がしっかりある里芋なので、ローストに向いていると思い、メニューを考えてきました。
他の里芋だと泥臭さがあってローストにできないので、この里芋だからこそできる調理法だと思います。
まいこ金時もホクホク感や甘みを活かしたいので、火を入れて地域の食材と組み合わせるだけのシンプルなものをお出しする予定です。」
 

『山野農園』の直売所では、まいこ金時とまいこ里芋を販売。ストレスの少ない環境で育てているため形が美しく、「見た目から上品な味が伝わってくる」と総料理長 柏木。

『山野農園』がある久美浜町や隣の網野町は、日本海から吹く潮風がミネラル分を豊富に含んだ砂丘をつくり、さつまいもや里芋の栽培に適した環境だったことから、昔は20〜30軒のさつまいも・里芋農家がありました。
しかし、後継者問題などで現在は5軒ほどまで減少。山野さんは砂丘地を活かした、まいこ金時とまいこ里芋の生産者を増やし、全国に京丹後の特産品としてPRしていくのが今後の目標だと話してくれました。
 

山野農園
住所:京都府京丹後市久美浜町湊宮468-5
TEL:0772-83-0611
https://yamanofarm.jimdofree.com

 

次に訪れたのは、『小野甚(おのじん)味噌醤油醸造』(以下、『おのじん』)。
大正元年創業時から木桶でじっくりと発酵・熟成されるこだわりの製法を守りながら、家庭用商品だけでなく、ホテル・レストランなどで使う業務用商品や、醤油や味噌の加工品なども製造販売されています。
ホテルグランヴィア京都では、『おのじん』の醤油と醤油糀を使わせていただいており、総料理長 柏木は今回で2度目の訪問になります。
 

90年以上使われている杉材の木桶は丁寧に管理されており、昔ながらの竹のタガが使われています。

「前回伺ったときに色々テイスティングさせていただいたのですが、醤油も味噌もすごくピュアな味で感動しました。
どれも塩味がまろやかで、旨みがあるんです。
ホテルに持ち帰って他のシェフにも食べてもらったのですが、その味わいにびっくりしていましたね」と総料理長 柏木。
 

木樽で仕込む醤油は約3年、味噌は約1年で完成します。「暑い年や寒い年、その年によって気候は変わるけれど、最終的に麹菌が同じような味に調整してくれる」と小野さん。

醸造の工程で最も重要になるのが麹づくり。『おのじん』では丹後産の大豆を使い、厳選した安心の食材で醤油と味噌を仕込んでいます。
「醤油は大豆を蒸して麹菌をまぶし、麹室に入れて麹菌を増やすのですが、管理する温度で味が変わり、その温度が蔵の個性につながります。
今はオートメーションで温度管理ができますが、昔は自然の温度と湿度で管理をしていたので大変でした。
あとは長い時を経て蔵の中や木桶に住み着いた酵母菌や乳酸菌のおかげで、『おのじん』特有のまろやかな塩味の醤油と味噌が完成します。」
 

4代目の小野甚一さん。40年ほど前に継承し、ふりかけやドレッシングなど新しい分野の商品づくりや、アジア・ヨーロッパなど海外への販売も積極的に取り組んでいます。

醤油や味噌をつくる酵母菌や乳酸菌は、もちろん肉眼で見えませんが、黒く染まった蔵の梁や、蔵の中の芳しい香りがその存在を感じさせてくれます。
総料理長 柏木は、『おのじん』でしかつくれないピュアな味を、蔵の香りから感じたと言います。
「私たちは、いい食材との出会いで新しいインスピレーションが生まれます。
食材のストーリーを感じることで料理への向き合い方も変わってきますし、お客様にも伝えやすくなる。
『おのじん』さんの醤油や味噌、糀製品はそういう食材なんです。」

帰り際、小野さんから総料理長 柏木に、貴重な黒豆味噌のたまりをお土産に持たせてくれました。
熟成を深めた味噌に宿る大変希少な味噌たまりは、料理人が喉から手が出るほど欲しい食材です。
今回の出張レストランの食材として取り入れることを決めた総料理長 柏木。
どんなメニューになったのでしょうか。
 

出張レストランでは、『おのじん』の醤油糀と酒ひしおを京丹後の食材と組み合わせ、主役を引き立てる役割を担いました。


小野甚味噌醤油醸造
住所:京都府京丹後市峰山町杉谷300
TEL:0772-62-0476
https://www.onojin.com
 

最後に訪れたのは、ビニールハウスでトマトを栽培する『大江農園』。
春から夏にかけてメロンを、夏から秋にかけてトマトを同じハウスで栽培しています。
この地域ではメロンとトマトを交互に栽培することで、お互いが病気になりにくくなることから、メロン農家の多くがトマトも栽培しているそうです。
8棟あるビニールハウスの中には、およそ6000株のトマトが生い茂っています。

「ヘタの縁に濃い緑が出ているトマトの方が美味しい」と大江さん。
薄く赤色になってきたら収穫し、3・4日追熟するときれいな赤色に。
完熟でとるよりも旨みが強くなるそう。

「この場所は粘土質の土で、雨が降ると小麦粉に水を入れたみたいに水が残ってしまうんです。
栽培するのが夏の暑い時期なので、水の加減が難しく作りにくいのですが、この場所で作るトマトが美味しいんです」と大江さん。
 

大学院で物理学の研究に励んでいた大江陽介さん。毎年試行錯誤をしながら、旨みのあるトマトが実る栽培方法を探っています。

作っているのは、「桃太郎ヨーク」という大玉品種。
水をやるとどんどん大きくなる品種ですが、あえて水を減らして小さく育て、味を凝縮するのが大江さん流。
丈夫な苗を作って根をしっかりと土壌にはらすことで、実に旨みが詰まっていくそうです。

ホテルグランヴィア京都のレストランで使用することもある『大江農園』のトマト。
総料理長 柏木が初めて食べたときの感想は“きれいな味”でした。
「いいものは“きれいな味”がするように私は思います。
甘いトマトはたくさんあるけれど、『大江農園』さんのトマトは酸味と旨みがあるので、後味がすっきりしている。
出張レストランではこの味を活かしながら、ひと手間加えたメニューを味わっていただけたらと思っています。」
 

トマトの青い匂いが好きだという総料理長 柏木。「この香りを嗅ぐと人それぞれいろんな記憶が蘇ってくると思うんです。いつか料理で表現したいですね。」

11月いっぱいでトマトの収穫が終わると、京丹後の冬の天気はほとんどが雨か雪に。
『大江農園』ではビニールハウスを外して土に直接雪を当てることで害虫の発生を抑え、土に何も混ぜなくても美味しいトマトが育つサイクルを大切にしています。
大江さんは京丹後の気候を味方につけながら、トライアンドエラーを繰り返し、もう一歩先の旨みのあるトマトを目指しています。
総料理長 柏木は大江さんのその姿勢に、何度も試作を繰り返し、納得のいく一皿をつくりあげる料理人としてシンパシーを感じながら、この日の会場である丹後王国「食のみやこ」へ向かいました。

大江農園
住所:京都府京丹後市網野町島津3023
TEL:0772-72-0492
http://ooenouen.jp/index.html

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